• 実際の製品発表と呼べるものはTSMCのADK(AI Design Kit)。これは、人が利用する従来のPDKを、TSMC自身の設計履歴を学習したAIエージェントに置き換えるもの。それ以外の発表は、ロードマップとパートナー認証に関するものだった。
  • 主要3社のEDAベンダーはいずれも、量産開始の約2年前となる今回のイベントでA14の認証を取得。ツールの準備は計画通り進行中。今後は、認証済みの設計フローの中でAIエージェントが何を行うのかが重要なポイントになる。
  • TSMCは、2029年のロードマップにDRAM-on-logicを組み込んでおり、1 pJ/bit未満の消費エネルギーで、HBM5Eの約3倍の帯域幅を目指している。本シリーズのd-Matrixに関する当社レポートでも、異なるアプローチから同じ結論に達している。
  • 光技術は、TSMCとGlobalFoundries(GF)は異なる課題の解決を目指している。TSMCのCOUPEは光エンジンをTSMCのパッケージ上に取り込むのに対し、GFのSCALEは幅広い顧客に提供できる外販型モジュールとして展開されている。いずれもOCI仕様に準拠しているため、両者の違いは光エンジンをどこに配置するかにあります。TSMCは自社パッケージ内では優位性を持つ一方、GFの方が対象となる市場は大きくなる。
  • セッション間で一致しない数値もあった。2028年の1パッケージ当たりのHBMスタック数について、あるセッションでは16スタックとされていた一方、TSMC自身のロードマップスライドでは20スタックと示されていた。これは、様々な理由から現在見られているHBMスタック数削減の動きとも矛盾している。
  • 戦略の核となるのは「バンドル化」。個々のレイヤーはそれぞれ単独で置き換えることが可能だが、スタック全体となると簡単には置き換えられない。カウンターポイントリサーチのFoundry Trackerによると、専業ファウンドリ売上高に占めるTSMCのシェアは73%。ADKは、TSMCがオングストローム世代に入ってもこの地位を守るための重要な手段になりそうである。

TSMCのOIP発表内容を読み解く

TSMCは9月23日、サンタクララ・コンベンションセンターで「Expanding AI with Leadership Ecosystem」をテーマに、2026 North America OIP Ecosystem Forumを開催しました。これは、4月に開催されたシリコン技術側のシンポジウムに対応する、設計側のイベントです。

当日は、TSMCによるオープニング、BroadcomによるASICの基調講演、TSMCのR&D基調講演、パッケージング関連のセッションに続き、3つの並行トラックが行われました。会場では約30件の講演が実施され、さらに約35件の講演が6カ月間オンラインで配信されます。展示フロアには50~100社のパートナー企業が参加し、スタートアップ向けの新設エリア「Emerging Technologies Alley」も設けられました。TSMCのブースには、9.5倍レチクルサイズのCoWoSテストビークルが展示されていました。これは2027年向けの構成で、現在量産されている最大のCoWoSは5.5倍レチクルサイズです。基調講演会場では撮影が制限されていたため、ここで紹介する内容は筆者自身のメモに基づいています。

OIPは、ファウンドリ事業における技術そのものに焦点を当てた取り組みというより、顧客向けの側面を担うものです。現在では6つのアライアンスに約90社が参加しています。imecのIC-LinkもCloud Allianceに加わり、TSMCのPDKを利用しながら、Synopsys、Cadence、Siemensのツールを組み合わせた設計フローを実行できるマネージド環境を提供しています。

今回の発表で最も注目されたのが、TSMC AI Design Kit(ADK)です。ファウンドリが設計手法そのものを提供し始めたことを示す象徴的な取り組みと言えます。

最大の注目点はADK

TSMCは、人間中心のPDKからADKへと移行する方向性を打ち出しています。AIエージェントは、セル選択、ピンエスケープ、ルーティング戦略といったファウンドリ独自の技術レイヤーから学習し、エンジニアによる操作を待つのではなく、自らワークフローを実行します。すでに設計センターやEDAパートナーから、TSMC固有のデータが投入され始めています。このレベルのAIエージェントによって、設計時間が短縮され、設計サイクルも高速化すると考えられます。一方で、その背後にあるデータを誰が所有するのか、インテリジェンスがワークフローの中をどのように流れるのか、誰のプロセスIPが適用されるのか、そして誰がその対価を得るのかについては、依然として明確になっていません。

図: カウンターポイントリサーチ TSMC OIP 2026

本記事のフルバージョン調査レポートはこちら:  $Trillion Bottleneck:メモリの壁 :: TSMCのAI設計キット、製品としてのパッケージング、そして2029年の3D DRAM 

 

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