- YMTCは、中国のメモリー半導体産業で双璧をなすCXMTの2026年7月における大型IPO実施に続き、上海証券取引所の科創板(STAR Market)への新規株式公開(IPO)を申請
- 武漢に本社を置くYMTCは、2026年第2四半期にNANDの出荷容量でグローバル第3位に浮上し、Samsung、SK Hynixに次ぐ順位となる。キオクシアとMicronを上回り、SK Hynix傘下のSolidigm分を除外した場合、YMTCはすでにグローバル第2位に
- YMTCのNAND市場における売上高シェアは、2025年第1四半期の9%から2026年第1四半期の14%へと、4四半期で5割以上拡大。売上高成長率は前年同期比で最大478%に達した
- 2024年にはほぼゼロだったエンタープライズSSD関連の売上高は、AIデータセンターの導入拡大が続く中、2028年にはYMTCの総売上高の約39%に達すると予測されている
- YMTCは独自のウェハー接合技術「Xtacking」をNANDからDRAMへと展開し、中国国内向けの汎用NANDサプライヤーから、次世代AIメモリーを手掛けるメーカーへの転換を目指している
中国で唯一、NANDフラッシュメモリーを商業規模で生産するYangtze Memory Technologies (YMTC)が、上海証券取引所の科創板(STAR Market)への新規株式公開(IPO)を申請したことを、カウンターポイントリサーチが確認しました。中国のメモリー半導体産業でYMTCと双璧をなすCXMTが同市場に上場してから、約1カ月後の申請となります。今回のIPO申請は、YMTCがグローバルNAND市場で急速に存在感を高める中で行われました。
カウンターポイントリサーチのMemory Tracker and Forecastによると、中国・武漢に本社を置くYMTCは、2026年第2四半期にNANDの出荷容量でグローバル第3位に浮上しました。Samsung Electronics、SK hynixに次ぐ順位となり、日本のキオクシアと米国のMicron Technologyを上回りました。さらに、SK hynixの出荷容量から傘下のSolidigm分を除外した場合、YMTCはグローバル第2位となります。
図1: グローバルNAND市場シェア・出荷容量ベース

出典:カウンターポイントリサーチMemory Tracker & Forecast
一方、YMTCのグローバルNAND市場における売上高シェアは、2025年第1四半期の9%から2026年第1四半期には14%へと、5割以上拡大しました。この期間におけるシェアの拡大幅は主要NANDメーカーの中で最大となっています。AI需要の拡大がNAND市場全体を押し上げる中、YMTCの売上高成長率は前年同期比で最大478%に達しました。
YMTCの急成長に関して、カウンターポイントリサーチのシニアアナリストJeongku Choiは次の通り述べています。
「AIがNAND市場のスーパーサイクルを牽引する中、YMTCは最も成長著しいメーカーとなっています。地政学的な逆風に直面しながらも、技術力と生産能力に対して慎重かつ着実な投資を進めてきました。2026年のYMTCの売上高成長率は、業界全体や競合他社の約6倍に達する見込みです」
図2: YMTC売上高推移:2023年第1四半期~2026年第2四半期

出典:カウンターポイントリサーチ Memory Tracker & Forecast
YMTCの成長を実際に牽引しているもの
YMTCの成長を支えている要因の多くは、わずか2年前まで同社がほとんど参入していなかった市場、すなわちAIデータセンター向けエンタープライズSSDにあります。
カウンターポイントリサーチのリサーチディレクターMS Hwangは、次の通り述べています。
「YMTCは、価格上昇と中国国内の出荷数量拡大の両面で市場の上昇局面の恩恵を受けていますが、これまではエンタープライズSSD市場の価格プレミアムを十分に取り込めていませんでした。しかし、2024年には実質的にゼロだったサーバー関連売上高が、2028年には総売上高の約39%に達すると予測しています。今後の重要な戦略は、Huaweiとの中国国内エンタープライズ市場における重要な取引関係に加え、Phison、DapuStor、Silicon Motion、DERA、T-Headといった企業とのSSDコントローラー分野でのパートナーシップを拡充することになるでしょう。さらに重要なのは、こうした取り組みを中国国内のハイパースケーラーにとどまらず、海外顧客からのデザインウィンにつなげられるかどうかです。それが実現すれば、世界首位のSamsungに挑戦するYMTCの成長をさらに後押しすることになることでしょう」
IPOの背景
YMTCは、2026年初めにIPOに向けた上場指導の届出と第1段階の進捗報告を行った後、同年8月に上海証券取引所の科創板(STAR Market)へのIPO目論見書を提出しました。今回のIPO申請は、中国の有力DRAMメーカーであるCXMTが、2026年7月16日に同市場へ上場してから約1カ月後のことです。カウンターポイントリサーチが以前報告した通り、CXMTの時価総額は上場初日に3兆人民元(約4,430億米ドル)を超えました。なお、YMTCの企業評価額およびIPO時の公募価格は、現時点ではまだ決定していません。
競合他社が認識し始めた技術的優位性
YMTCがグローバル市場で順位を上げている背景には、同社独自の「Xtackingアーキテクチャ」があります。この技術は、メモリーセルアレイと周辺ロジック回路を別々のウェハー上に製造し、その後に接合するものです。これにより、それぞれの層に最適な製造プロセスを採用することが可能になります。

出典: カウンターポイントリサーチ Memory Research, September 2026
YMTCの技術力に関して、カウンターポイントリサーチのリサーチバイスプレジデントNeil Shahは次の通り述べています。
「武漢にあるYMTC本社の1階には、同社が独自に保有する知的財産を紹介する『Patent Wall(特許の壁)』が設置されています。Xtackingのような革新的な技術によって、YMTCは最先端ではない成熟世代の露光装置を使用しながらも、メモリーの積層数を増やし続けることができます。米国の輸出規制によって最先端製造装置へのアクセスが制限される中、これは極めて重要な競争優位性となっています。こうした技術的優位性は、中国の競合メーカーではほとんど例のない形でも実証されています。また、世界最大のNANDメーカーであるSamsung Electronicsが、2025年2月にYMTCのXtacking関連特許のライセンスを取得しています」
この技術的優位性を支えているのが、幅広い研究開発基盤です。カウンターポイントリサーチが確認したYMTCのIPO目論見書によると、同社の2023年から2025年までの累計研究開発費は142億人民元に達し、売上高の5%超を占めています。また、研究開発人員は4,796人と全従業員の30%以上を占め、登録済みの発明特許は5,611件に上ります。
Xtacking技術をDRAMへ展開
YMTCが次に目指しているのは、NANDで培ったXtackingの技術的優位性を、これまで大規模な量産実績のないDRAM市場へと展開することです。2025年10月以降、YMTCは第2工場(Fab 2)において、第2世代の16Gb LPDDR5チップ(7,500 MT/s)の研究開発と試験を、月間約5,000枚のウェハー規模で進めています。このチップには、High-K Metal Gate(HKMG)技術は採用されていません。同時に、同社は垂直チャネルトランジスタ(Vertical Channel Transistor:VCT)を用いた4F²セルアーキテクチャを採用し、9,600 MT/sの高速動作を実現する製品の開発も進めています。これは、セル構造を根本から再設計する取り組みであり、目標とする性能を達成できれば、第3工場(Fab 3)で量産を開始する計画です。
Shahはさらに、次のように述べています。
「長期的には、YMTCの技術ロードマップは3D DRAMへと向かっています。これは、メモリーセルを平面上に配置するのではなく、垂直方向に積層する技術です。カウンターポイントリサーチでは、この技術転換は、YMTCのようにウェハー接合技術で実績を持つ企業に有利に働くと考えています」
カウンターポイントリサーチが注視する4つのポイント
- DRAM事業の実行力: YMTCが開発を進めるVCT/4F²アーキテクチャ採用のLPDDR5が、すでに生産されている7,500 MT/s版から9,600 MT/sへの高速化を実現し、製品認定をクリアした上で、予定通り第3工場(Fab 3)での量産に移行できるか。また、3D DRAMの技術ロードマップがどの程度のスピードで具体化するか。
- 中国国外でのエンタープライズSSD事業の拡大: 2024年にはほぼゼロだったサーバー関連売上高は、2028年には総売上高の約39%に達すると予測されています。SSDコントローラーを中心とするパートナーエコシステムとHuaweiとの取引関係を活用し、中国国内のハイパースケーラーだけでなく、海外顧客からの設計採用につなげられるかが焦点となります。
- 輸出規制の強化: YMTCは2022年12月から米国のエンティティリストに掲載されています。現在審議中の米国法案「MATCH Act」では、YMTCが具体的に名指しされており、同社の技術ロードマップに不可欠な深紫外線(DUV)露光装置、エッチング装置、成膜装置が規制対象とされています。
- YMTCが掲げる長期目標である、DRAMを含む月間約50万枚のウェハー生産能力の確保と、現在16.5%のNAND出荷容量ベースの世界市場シェアを20%まで拡大する目標に向けた進捗が注目されます。
【カウンターポイントリサーチ概要】
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