カウンターポイントリサーチ (英文名: Counterpoint Research 以下、カウンターポイントリサーチ)は、2026年上期のグローバル四足歩行ロボット市場における出荷台数は約3万5,000台に達したという最新調査を発表致しました。
四足歩行ロボットは、長年に渡りロボティクス技術の研究開発における最先端分野の一つとされてきました。2015年には、Boston Dynamicsが「Spot Classic」のデモ動画を公開し、このモーター駆動型の試作機は、屋内外で安定して歩行できる他、人と並走したり、障害物を乗り越えたりすることが可能で、当時、世界のテクノロジー業界から大きな注目を集めました。
それから約10年が経ち、四足歩行ロボット産業は、単に技術力を示す研究室レベルの能力実証から、実際のビジネス現場で日常的に活用される段階へと大きく進化しています。この産業変革を牽引しているのが中国です。中国の四足歩行ロボット企業は、コアハードウェアや基盤技術スタックを自社開発し、オープンで共生的な産業エコシステムを形成することで、主要な市場参加者から、技術革新や業界標準策定を主導する存在へと徐々に成長しています。
2025年のグローバル市場における四足歩行ロボット出荷台数は4万6,000台に達し、産業全体の売上高は約7億ドルに迫りました。これには四足歩行ロボット向けの関連ハードウェアおよびソフトウェアの売上も含まれます。また、中国企業はグローバル市場の90%以上を占めました。
グローバル四足歩行ロボット市場、2026年上期に力強く成長
2026年、主要な四足歩行ロボット企業は、商用化を加速させる重要な局面に入っています。一方では、文化・エンターテインメント、教育、科学研究分野での展開をさらに深めながら、国内外で市場基盤を拡大しています。もう一方では、技術力の高い企業を中心に、様々な産業分野への導入が加速しています。既に、警備・巡回、産業設備の点検、消防・緊急対応、物流輸送といった主要用途において大規模導入が進み、現場の中核業務を担うケースも見られます。
2026年上期のグローバル四足歩行ロボット出荷台数は約3万5,000台に達し、その40%が産業用途でした。特に、中型・大型の四足歩行ロボットに対する需要が大きく増加しています。
図1: ベンダー別 グローバル四足歩行ロボット出荷シェア・2026年上期

※子どものコンパニオン用途専用に設計されたエントリーレベルの小型モデルは集計対象外
ベンダー別では、Unitreeが37%のシェアで首位となりました。Unitreeは早い段階から四足歩行ロボットの商用化に取り組んでおり、エンターテインメントおよび教育・研究分野を中心に、豊富な製品・技術ポートフォリオと比較的成熟した二次開発エコシステムを構築してきました。その結果、科学研究・教育分野を中心に、世界各地で大規模な顧客基盤を形成しています。
さらに、先行者優位に加え、コアハードウェアと運動制御アルゴリズムの自社開発により、Unitreeの小型四足歩行ロボットは業界トップクラスの粗利益率を実現しています。こうした背景から、2026年上期のUnitreeの四足歩行ロボット出荷のうち、エンターテインメントおよび教育・研究用途が70%以上を占めました。
一方、エンターテインメントや教育・研究分野と比較すると、産業用途では成長がやや緩やかでした。同期間における世界の産業用四足歩行ロボット市場でのシェアは17.6%で、第4位となっています。
AGIQUADは2025年8月に正式に設立されました。同社の事業はAGIBOTのLingxi製品ラインから分離して誕生し、AGIBOTが保有するフルスタックの技術力を継承しています。中核的な産業用途にフォーカスし、小型から中大型までをカバーする製品ポートフォリオを短期間で構築したことで、AGIQUADは2026年に入って最も急成長している四足歩行ロボットブランドの一つとなっています。2026年上期には市場全体で16.3%のシェアを獲得しました。産業用四足歩行ロボット市場では出荷台数で世界首位となっています。出荷内訳を見ると、成長余地が大きく単価も高い産業向けB2B市場が全出荷の約70%を占めています。また、海外市場向けも全体の40%を占めており、多様な顧客基盤を形成しています。先を見据えた製品企画と市場展開により、AGIQUADの成長は単なる規模拡大にとどまらず、規模と質の双方が同時に向上する形で進んでいます。
Genisom AIは、完成機および主要部品の製造における高い能力を強みとしています。「L(Gangbeng)」シリーズと「M(Tongchui)」シリーズの2つの製品ラインを展開し、産業向けB2B、教育・研究、緊急救助用途に市場を広げています。2026年上期の出荷シェアは12.6%で、世界第3位となりました。その中でもヘビーデューティー用である「M」シリーズは出荷台数が1,000台を超えており、電力設備や消防など、高負荷かつ複雑な作業環境を対象としています。これは、Genisom AIが垂直産業に対応し、カスタマイズされた産業ソリューションを構築する能力を有していることを示しています。
DEEP Roboticsは引き続き産業用途に注力しており、産業用四足歩行ロボット市場では26%のシェアで第2位となっています。同社は、電力設備や消防・緊急対応などの分野で顕著な先行者優位を有しており、政府機関や企業の顧客基盤に加え、プロジェクト導入や運用・保守に関する豊富な実績を持っています。B2Bの産業顧客に対しては、高信頼性の四足歩行ロボット向けハードウェアプラットフォームを提供するだけでなく、顧客ごとの利用シーンに応じた統合型産業ソリューションも提供しています。2026年には「Lynx」シリーズへの需要が大きく増加しました。車輪と脚を組み合わせたハイブリッド設計により、長距離の屋外点検業務への対応力が高まり、電力設備点検分野におけるDEEP Roboticsの競争力をさらに強化しています。
産業分野での需要急増が四足歩行ロボット市場の持続的成長を牽引
現在、小型・低積載の四足歩行ロボット(動的積載量20kg以下)は、標準化されたシャーシ設計を背景に、商用化が比較的速く、スケール展開もしやすいという特徴があります。商業イベントでのパフォーマンス、科学研究・教育、家庭内コンパニオン、軽負荷の警備・巡回、地下パイプラインの総合点検など、幅広い用途で導入されています。また、障害物乗り越え能力を備えたコンパクトな小型四足歩行ロボットは、物流輸送や盲導犬用途といった新興分野においても大きな成長可能性を持っています。
一方、中型・大型の高耐久四足歩行ロボットは、主に工場、電力設備、鉱山など、複雑な環境下での点検業務に利用されています。耐久性やIP保護等級が強化されており、20kgを超える実用的な動的積載量に対応可能です。汎用的な搬送プラットフォームとして、実際の作業要件に応じて、深度カメラ、LiDAR、ガス検知器、サーマルカメラなど、さまざまなセンサーを搭載できます。複数センサーの融合により、3Dパノラマ認識、AIによるシーン認識、インテリジェントな意思決定が可能になります。さらに、ロボットアーム、レーザー切断装置、無線基地局などの機能モジュールを搭載することで、消防・救助や災害後の捜索などにも対応でき、現場での作業能力を多様化できます。
2026年上期に出荷された3万5,000台の四足歩行ロボットの内、およそ5台に1台が中型または大型モデルでした。業界の成長ドライバーが、エンターテインメント、文化、教育分野からB2Bの産業用途へと移行する中、ヘビーデューティー用の産業用四足歩行ロボット分野の重要性は一段と高まっています。
また、主要企業間の競争軸も、単純なロボットの移動性能から、各産業分野に特化したソリューションを提供できる能力へと変化しています。2026年上期には、AGIQUADが急成長を遂げ、DEEP Roboticsとともにヘビーデューティー産業用四足歩行ロボット市場のトップグループを形成しました。両社の主力製品には、四足歩行型のD1 MaxProおよびX30シリーズ、車輪・脚ハイブリッド型のD1 MaxおよびLynx Mシリーズなどがあり、これらのロボットは、高い積載重量比、長時間のバッテリー駆動、高い保護性能、優れた地形適応能力など、複雑な作業環境に必要な基本性能を備えています。また、多数の標準拡張インターフェースを備えており、さまざまな認識・作業モジュールや、自社開発の産業向けタスクソフトウェアを統合することができます。これにより、各産業用途に合わせてカスタマイズしたプラットフォーム型ソリューションの導入が可能になります。
主要メーカーによる産業市場での商用化の進展と、文化・エンターテインメント・教育分野での継続的な市場開拓を背景に、カウンターポイントリサーチは、2026年のグローバル四足歩行ロボット出荷台数が初めて9万台を超え、年間産業売上高は15億ドルに達すると予測しています。B2Bの産業用途から生み出される売上は、引き続き文化・エンターテインメント・教育用途を上回る見通しです。長期的には、文化、教育、コンシューマー市場にも大きな成長余地が残るものの、産業用途が業界拡大を牽引する明確な中核エンジンとなっています。2030年までに、世界の四足歩行ロボット市場規模は100億ドルを超え、年平均成長率(CAGR)は60%以上になると予測されています。そのうち、産業設備の点検および警備・巡回用途が市場全体の約60%を占める見通しです。
図2: 用途別 世界四足歩行ロボット産業売上構成・2030年

AIネイティブ時代、汎用Embodied AIモデルが四足歩行ロボットの能力領域を再定義
産業化が進む中、認識と運動制御、自律航法技術が主要な技術突破領域となっています。これらの技術によって、四足歩行ロボットは視覚的に周囲を認識しながら、いわば「目を開けた状態」で地形を移動できるようになり、数カ月単位の無人点検ミッションにも対応可能になります。
AGIQUADは2026年7月のWAIC 2026において、認識・運動制御エンジン「AGIQUADLoco」と自律航法エンジン「AGIQUADNav」を業界に先駆けて発表しました。9月には、Genisom AIやGalileoを含む複数のベンダーも相次いで独自の認識・運動制御モデルを発表しています。
カウンターポイントリサーチは、インテリジェンスこそが産業用途の潜在力を引き出し、導入規模を左右する中核的な変数であると考えています。電力設備点検を例にすると、現在の四足歩行ロボットは主に認識を中心とした点検業務に活用されています。長期的には、業界では、四足歩行ロボットが認識、推論、実行を一貫して自律的に行える能力を持つことが期待されています。具体的には、環境の異常や設備の不具合を自律的に検知して危険を報告するだけでなく、異常事象に対して自ら介入し、解決できるようになることが求められます。例えば、ロボットアームなどのアクチュエーターを搭載することで、通電状態でのプラグの挿抜作業や、故障部品の交換などを行えるようになれば、四足歩行ロボットの現場導入価値はさらに高まります。インテリジェンスは、四足歩行ロボット産業における中核的な進化の方向性となっているだけでなく、企業が長期的な技術的参入障壁を構築し、製品競争力を差別化するための重要な要素にもなっています。
こうした産業動向を背景に、AGIBOTはプラットフォーム型の研究開発体制へと移行しています。四足歩行ロボット、ヒューマノイドロボット、器用なロボットハンドは、AGIBOTが蓄積してきたEmbodied AIモデル、データ管理、シミュレーション、運動制御に関する知見や最先端の研究成果を共有できます。これにより、グループ全体が先端研究開発を担い、AGIQUADが産業用途のソリューション提供に注力するという協業体制が構築されています。
中長期的には、四足歩行ロボットの技術スタックは、「小脳」にあたる制御レイヤーの上に、「脳」に相当するVLAや汎用Embodied AIモデルを重ねる方向へと進化していく見通しです。これにより、ロボットはマルチモーダル認識、空間的な意味理解、自律的なタスク推論、専門的な作業スキルを備えるようになります。さらに、環境理解や動作計画における汎化能力が高まることで、オープンな環境や予期しない異常事象にも、より柔軟に対応できるようになります。これは、自律的な意思決定能力の不足、産業用途への適応に要する長い期間、複雑な作業環境下での導入難易度といった主要な課題の解消につながり、四足歩行ロボットの産業市場への普及を加速させると考えられます。
本プレスリリースに関する詳細並びに情報は、こちらからご覧いただけます。
https://counterpointresearch.com/jp/coverage/robotics/humanoid-robot
*本プレスリリースは2026年9月21日に発表されたプレスリリースの日本語版です。原文はこちらをご参照ください。
https://counterpointresearch.com/en/insights/global-quadruped-robot-shipments-hit-35000-units-in-growing-industry-demand
今回の発表は、チャネル情報、POSデータ、ディストリビューターアンケート調査、公開データなどボトムアップデータソースとトップダウンリサーチの組み合わせによるカウンターポイント社独自の調査方法で実施したものです。
【カウンターポイントリサーチ概要】
テクノロジーエコシステム全体にわたる製品を専門とするグローバル市場調査会社です。世界の主要なイノベーションハブ、製造クラスター、商業センターに拠点を構え、スマートフォンOEM、チップメーカー、チャネル企業、大手テクノロジー企業など、幅広いクライアント様にサービスを提供しています。経験豊富な専門家が率いる当社のアナリストチームは、経営幹部から戦略、アナリストリレーション(AR)、市場情報(MI)、ビジネスインテリジェンス(BI)、製品・マーケティングの各分野のプロフェッショナルまで、企業全体のステークホルダーと連携し、市場データ、業界のソートリーダーシップ、コンサルティングといった幅広いサービスを提供しています。
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公式ウェブサイト: https://counterpointresearch.com/jp